アマチュア無線局免許状、2025年10月から完全電子化へ――紙免許廃止で何が変わる?

はじめに
アマチュア無線を楽しむ方にとって「免許状」は、自分の局の存在を証明する大切な書類です。アマチュア局は、紙の免許状を受け取り、無線局の常置場所に掲示・備付けするルールでした。しかし総務省は法改正と政令の公布を経て、2025年10月1日(令和7年10月1日)から紙の交付を廃止し、電子的な免許記録のみでの運用に切り替えることを決定しました。
この変化は単なる「デジタル化」という一言で片づけられない影響をもたらします。本記事では、法改正の経緯から施行日、掲示方法の実務、従来免許の経過措置、さらには申請者のメリット・懸念点まで、制度の全容をアマチュア無線の免許を持つ行政書士がわかりやすく解説します。
1. 電波法改正と電子化の流れ
今回の免許状電子化は電波法の改正に基づきます。この改正で無線局免許状等を紙で交付することが廃止され、インターネット上で免許記録を閲覧できる制度が創設されました。
今後は総務省のシステムに記録される免許記録そのものが法的効力を持つことになります。
行政全体のデジタル化政策(デジタル庁やマイナンバー活用)と歩調を合わせて進められており、無線分野においても「紙から電子へ」が本格的に実現することになります。
2. 施行日:令和7年10月1日で確定
当初は「公布から9か月以内」という表現があり、一部で「2026年1月頃までに順次実施されるのでは」との混乱もありました。しかし2025年7月25日に公布された政令により、施行期日は令和7年10月1日と確定しました。
これにより、2025年10月1日以降に交付される新しい免許状はすべて電子化されます。以後、紙の免許状は発行されません。これまで手元に届いていた紙の免許状が消える日が、いよいよ目前に迫っています。
3. 電子化で「何が」変わるのか?
(1) 紙の免許状がなくなる
紙の免許状が郵送されることはなくなります。その代わりに、免許記録をインターネット上で確認する方式に一本化されます。
(2)免許状の備付けの方法が変わる
アマチュア局の無線局免許状は、無線設備の常置場所に備え付けることとされています。今回の電子化に伴う改正では、備え付けの義務は変わりませんが、紙の免許状が廃止されることに伴い、今後は次の4通りの方法を選択できるようになります。
- 免許記録を画面表示できるPC、スマホ等を備付け
- 総務書電波利用電子申請システムから出力・ダウンロードした「免許記録等の写し」を画面表示できるPC、スマホ等を備付け
- 電子申請システムから印刷出力した免許記録(アマチュア局はA5サイズ指定)を備付け
- 総務省が発行する「免許事項証明書等」を備付け
つまり「スマホ画面でもOK、紙の印刷でもOK」となります。
(3) 書面証明が必要な場合は「免許事項証明書」
どうしても紙の証明が必要な場合(例えば金融機関や他の手続きで「公的証明」として必要になる場合)には、免許事項証明書を総務省に請求できます。これは従来の免許状に近い扱いになりますが、名称も形式も新しくなっています。
4. 従来の紙免許状はどうなる? ― 経過措置
すでに交付されている紙の免許状は、10月1日以降も「免許事項証明書等とみなす」規定によって引き続き使用可能です。つまり、有効期限内であればそのまま掲示・備付けして差し支えありません。
改めて免許記録等の閲覧請求や免許事項証明書等を請求する必要はありません。
この「みなし規定」があるおかげで「紙は無効になったのでは?」と慌てる必要はありません。現行の紙免許が自然に切り替わるのではなく、期限を迎えるまでは引き続き有効です。
5. 手数料の改定 ― 電子化のメリット
免許状の電子化に伴い、同日施行の「電波法関係手数料令」も改正されます。ポイントは以下の通りです。
- 電子申請+電子交付(免許記録閲覧のみ) → 従来より安価
- 紙による免許状交付(廃止) → 完全になくなる
- 書面による免許申請+免許事項証明書の交付 →実質値上げ
例えば50W以下のアマチュア局の開局申請の場合、現行の制度では電子申請の手数料は4,500円ですが、改正後は3,750円となります。書面申請の手数料は現行6,700円ですが、改正後は7,080円(証明書交付を含む)となります。書面申請との手数料額の差が大きくなります。
6. 電子化に伴う懸念点と対策
(1) スマホを持っていない場合
「スマホやタブレットを持っていない人はどうするのか?」という疑問があります。この場合は、免許事項証明書を請求するか、自宅で印刷した写しを備付ければ問題ありません。
(2) ネット障害や端末故障時
万一、通信障害や端末トラブルで免許記録をその場で表示できない場合に備え、印刷したコピーを予備として持参するのが実務的には安心です。
7. 理解しておくべきポイント
アマチュア無線家にとって重要なのは、「制度の転換を理解して、現場で慌てないこと」です。整理すると次のようになります。
- 施行日は2025年10月1日。以降は新規免許はすべて電子化。
- 掲示方法は4通り(スマホ・PDF・印刷・証明書)。
- 既存の紙免許は有効期限までそのまま使用可。
- 免許手数料は電子申請・電子免許状の場合は値下げされる。書面申請で紙の免許事項証明書が必要な場合は実質値上げ。
- スマホやPCを使わない人も証明書請求や印刷で対応可能。
8. 今後の展望 ― 従事者免許証はどうなる?
今回の電子化は「無線局免許状」に限られます。無線従事者免許証については対象外で、従来通りプラスチックカードのものが交付されます。
ただし、将来的には、自動車運転免許同様に他の免許証もマイナンバーカード等と統合される可能性が議論されており、さらなるデジタル化の波が押し寄せるかもしれません。
9. まとめ
今回の「免許状の電子化」は、日本の電波行政の歴史において大きな転換点となる出来事です。紙に記載された免許から、スマホやPCで確認する免許の時代へ。
便利さと同時に、新しい運用ルールへの慣れも求められます。戸惑いも予想されますが、制度のポイントを押さえておけば心配はいりません。
- 令和7年10月1日から施行
- 無線局への備付け方法は4通り
- 既存の紙免許は有効期限まで使用可
- 電子免許状の電子申請手数料は割安化
この4点をしっかり押さえておけば、移行後も安心して無線を楽しむことができます。
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